雛人形の並べ方は、地方によって異なります。
たかが並べ方と思われるかもしれませんが、
人間と同じで雛人形たちにも身分があり、
上下左右、それぞれの人形にふさわしい立ち位置というものが、
あらかじめ定められています。
そしてその位置が地方ごとに、
とりわけ関西圏と関東圏とで異なっているのです。
そこで今回は雛人形の並べ方について、
関西と関東の違いをご紹介したいと思います。
雛人形の並べ方は関西と関東では違う!?
関西の雛人形と関東の雛人形の一番の違いは、
「並べ方が左右逆」であるという点です。
すなわち関西では、
男雛を向かって右に、女雛を向かって左に置くのが普通ですが、
関東では、男雛を向かって左に、
女雛を向かって右に置くのが習わしとなっています。
これには理由があって、日本では昔から「上座・下座」の文化があり、
身分の高い人(上の人)は、向かって右に来るのが普通とされていました。
舞台用語の「上手・下手」という言葉もここから来ています。
雛人形は、おもに平安時代の貴族の生活をイメージして作られていますから、
この時代をより忠実に再現するならば、
人形の配置にも、上座・下座の考え方を反映させるのが自然です。
事実、伝統を重んじる京都を中心に関西圏の人々は、
位の高い男雛のほうを向かって右に置いています。
関東の人たちは、これをあえて真逆の配置にするわけですが、
これは、なにも『昔の風習をいつまでもしぶとく覚えてるなんて』
といういじわるな気持ちからそうしているわけではありません。
明治の文明開化以降、流行した欧米の考え方を、
東京の人たちがいち早く取り入れた結果です。
欧米では、日本とは逆に、
男性は女性の右側に立つものとされていたのです。
同じ男女の組み合わせというだけで、
雛人形の並べ方にもこれを取り入れてしまうところが、
当時の日本人の過剰とも言える柔軟さをよく表していると思います。
雛人形の並べ方で京都で正しいのは?
先ほども触れたとおり雛人形の並べ方は基本的に、
平安時代当時の京都の宮中の伝統にならっています。
同じ立場でも身分の上下がある場合は、
上の方の人を左(向かって右)に並べるのが京都流雛人形の正しい並べ方です。
たとえば、おだいりさまのお付きの人として、
武装した立派な服を着た男性の人形が二体いると思いますが、
弓を持っているおじいちゃんの方が、
左大臣と言って上の身分の人です。
もう一人の刀を持っている若手の方と、
並べる位置を間違えないようにしましょう。
身分の低い方が左を陣取るなんて、
この時代あってはならないことですからね。
余談ですが、この付き人コンビは殿のお世話役として、
なかなか表に出られない殿に代わって、
恋愛の橋渡しなんかもしてあげていたそうですよ。
おじいちゃんと青年が、殿の色恋に振り回され、
奔走する姿を想像すると何だかほほえましいですね。
お雛様のお世話係は、二段目に飾られる三人官女です。
彼女たちの中に身分の上下はありません。
ただし人形の作りとして、
並べたときに不自然に見えない足の向きがあるはずですから、
そこにだけ注意しましょう。
その下の段には、五人囃子を並べます。
それぞれに楽器を持たせたら向かって右から、
謡、笛、小鼓、大鼓、太鼓と並べましょう。
これは、音の大きい順です。
彼らは今で言うところのバンドなので、
お互いに上下関係などはないのでしょうが、
並び方を見ると、ボーカルやメロディ担当、
つまり、観客によりアピールする役割の者が左に来ていることがわかります。
雛人形を見つめていると、
京都の宮中のさまざまな人間ドラマが見えてくる気がしませんか?
まとめ
いかがでしたでしょうか。
地方によって異なる雛人形の並べ方についてご紹介してきました。
参考になりましたら幸いです。
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